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2006年04月02日 (日)

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少し前に川崎チネチッタにて「crash」を観賞。「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本のポール・ハギスが初監督したもろにアメリカンな群像劇。2006年アカデミー作品賞、脚本賞、編集賞を受賞。多民族国家アメリカの掲げる自由と差別と言う矛盾を描いた映画だが、それでいて妙に軽妙な語り口の映画だった。(本文はネタバレ有り。)


脚本は見事と言う他ない。ポール・ハギスと言う人はなかなかに食わせ者(ほめ言葉)だと思った。

差別主義者だからと言って職務に不実であるとは限らない。黒人が社会的に弱者であるとは限らない。銃に込められた弾丸が実弾であるとは限らない。性格が温和で実直な青年が間違いを犯さないとは限らない。ギャングの黒人少年のポケットに入っているものは銃であるとは限らない。etc.etc...

この映画に登場する人物達は少なからず問題を抱え、社会の矛盾の中であがきながら他者を疑い、疑心暗鬼に狩られながらも寄り添うように生きている。ロサンゼルスのクリスマス直前に起きた様々な衝突、そのか弱い営みすべてを神様はただ天空より見下ろすだけ。社会に問題がある事は確かだが、未熟な法律や決まり事では今、この瞬間を生きる人々を救う事は出来ない。ただ懸命に瞬間を生きるしかないのだ。今日よりましな明日を信じて。

重いテーマであるにも関わらず、映画全体を包む空気はなぜかほんの少し希望に満ちて見える。もちろん諦観も見え隠れするけれど、全体を包む空気はなぜか温かい。シャープなカメラワークと編集、個性的で熟練した演者達、従来であればシニカルになるか暗く陰鬱な空気が支配しそうなものだが、この映画にはそれが(ほとんど)ない。不思議と観賞後の気分は悪いものではない。そのタッチこそがこの映画の最大の魅力であり、ポール・ハギスが「人間」を見つめる眼差しだと考えるのは、いささか能天気に過ぎるだろうか。少なくともロサンゼルスほどの危険と差別に背中合わせで暮らす事のない、この平和な国で生きる僕にはそう思えた。

手放しでほめちぎっているけど、ちょっと気になった所も。この軽妙なタッチを実現する為だと思うけれど、いくつかの営みや出来事は実に安易な表現を用いている。例えばラスト近辺の難民(やその斡旋役の中国人)の描き方など、あまりにステレオタイプに過ぎて、思わず失笑を漏らしてしまった。他にもそれぞれのキャラクターの関連性(繋ぐ糸)など、ひとつの物語として成立させる為にちょっと行き過ぎた(やり過ぎ、意味がない)関連性が見え隠れしており、その脚本家としての手練手管がいささか鬱陶しく思える部分もある。ぎりぎり許容範囲と納得はできるものの、やり過ぎ感は拭えず、この辺はいささか残念だった。テレビドラマだったら手放しで絶賛しちゃうけど、一本の映画として見ると評価を左右しかねない要素だった。

アカデミー作品賞受賞に関しては「ブロークバック・マウンテン」がアカデミーの差別やら何やらが匂う中で逃した、その代わりに取ったような節も見えなくもないけれど、その事実もこの映画のストーリーのひとつと思えばまた一興。ともあれ、群像劇好き、人間ドラマ好きには間違いなくお薦め出来る作品だった。しばらくポール・ハギスと言う人からは目が離せそうにない。

クラッシュ
クラッシュ
posted with amazlet on 06.05.01
東宝 (2006/07/28)

Posted by at 21:06


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