いつも楽しみに読ませて頂いている A Study around Super Heroes のエントリでちょっと勘違いされてるかな、と思われる部分が有ったので突っ込んでおきます。同時に関連した常日頃思っていた事などをこの機会にちょっと書いておこうかな、と。一般的にはかなりどうでも良い事で、すごい細かい事です。すみません。
記事の内容にはまったく同感。こう言ったある種オカルト的な逸話を日和見主義で杓子定規に規制する事が多いのは何とかならない物か、と思います。ただ、ここまで規制しておいて一旦解除されると、物珍しさも手伝ってやたらと横行しそうな気もするので、それはそれで鬱陶しいと言う気もしますが。これは記事の意図とは関係ない話。
で、ツッコミと言うのは下記の......
「サブリミナル」という妄言 - A Study around Super Heroes
「3コマ打ち」という言葉が、アニメ界にはあるそうで。
セルの枚数をケチるために、1枚のセルを3コマ撮る。1枚の静止画が1/8秒=0.125秒。
でも、これだと止まって見えるので、動いてるように見せるために、日本のアニメ界は独特のノウハウを開発した。このケチケチ作戦が、ケガの功名で、他国になかなかマネのできない「ジャパニメーション」の興隆を築いたんだと思います。
と言うところに対して。
「3コマ打ち」は正確には「止まって見えないギリギリのコマ数」として手塚治虫氏が「鉄腕アトム」の時に採用された手法です。少なくともテレビシリーズに於いての基本コマ数は「3コマ打ち」です。実際、その後40年以上にわたって、日本のテレビアニメーションを支える手法として使われ続けていますから、ギリギリ不自然ではないタイミングと言えるかと思います。もちろん、全てに当てはまる事ではなく、動画と動画の間が離れすぎていたり、ポーズや表情の変化が大きすぎる、或いは間の絵が崩れていたりすると当然不自然に見えます。ですので、1/8秒=0.125秒が止まって見える、と言う表現も間違いではありません。で、逆にその止まって見えるのを逆手に取って、わざと不自然な動きを狙ったりするような手法もあります。また、通常カクカクして不自然に見えると言われている「4コマ打ち(1/6秒=0.166秒)」も動きの小さい部分にたくさんの枚数が投入される場合(つまり遅い動き)にはそれほど違和感が無い、と言う事で使われる事もまま有ります。
で、その後の「ケチケチ作戦」、所謂リミテッドアニメーションと言う物が日本のアニメーションに於いて、様々なノウハウと、独自の作画手法を生み出した事も確かです。実際潤沢に予算の有るスタジオジブリ作品なんかでも、未だに人の普通の動きは「3コマ」の方が自然に見える、と、劇場版でも使われているくらいですから、発想の元は予算でしたが、それ以外の「慣れ」の部分に於いてもそれだけ日本のアニメーションには深く浸透した手法と言えましょう。
非常に個人的な主張ですけど、こと日本のアニメーション業界に於いては、3コマベタ打ちで滑らか(と言うと語弊が有るな、意図した、と言うのが適切かも)な動きにならない作画は「ダメ」だと思ってます。本来コマ数の変化でなく、絵の入れ方(前後の流れ)とタイミング(ポーズとポーズのストローク)こそがアニメーションの本質であるからです。つまり「ぱらぱら紙でめくって動きの分かる作画」とも言えます。それこそ3コマ以下のコマ数でないと「止まって」見えてしまうような速い動きが意図された時に初めて2コマ、1コマが使われるべきだと思いますし、少なくともこれから新人さん、或いは日本でアニメーターを志す人は3コマできれいに動かす事を勉強して欲しいです。
もちろん3コマに慣れた目で不意に2コマや1コマのモンタージュを交える事で、そのシーンを浮かせて見せたり、演出手法として使われる事は有ります。僕などもスローモーションの効果が欲しい時にわざわざ、通常よりも枚数を使った2コマ打ちにする事などはよくあります。それはあくまでリミテッドアニメーションを逆手に取った手練手管(こう言うのを演出手法と言うのには抵抗があるのです)なワケで、作画(原画、動画)の基本は3コマです。
これまた余談ですが、ほとんどの撮影がデジタル(スキャン→彩色→コンポジット)に移行した今でも、一部の作品を除いてはフレームレートは24コマが主流です。30コマ(区別する為30フレームと呼称しますが)は1秒間での使用頻度の高いコマ数の公約数が少なく、3コマを基準にした動き(感覚)に馴染まないからです。実際、撮影(コンポジット)後のレンダリング、編集などの手間を考えると30フレームの方が良いのですが、演出、作画も含み、感覚的な技術が要求される部門(特にシビアにタイミングを読むタイプの優秀なスタッフ)ほど、脳内変換の負担は大変な物になります。実際僕も以前30フレーム作品をやりましたが、2度とやりたくありません(^^; 具体的に言うと、フレームレート24コマなら1コマ、2コマ、3コマ、4コマ、6コマ、8コマ、12コマと7つの公約数が取れます。フレームレート30フレームでも1コマ、2コマ、3コマ、5コマ、6コマ、10コマ、15コマと、公約数が7つなのは一緒なのですが一番必要な3コマ前後が少なく、割り切れない事が多いのです。これは予算的な事もたぶんに含みますが、スタッフ間での余計な齟齬を無くすと言う意味でも今後もなかなか移行の難しい部分かと思います。
かように3コマ打ちと言うのはフィルムの24コマと言うフレームレートを、最大限に生かした手法なのです。3コマバンザイ! 3コマは素晴らしい! なのであります。先日のRE なソフト のエントリで紹介した、マツダのロータリーエンジン開発秘話なんかを読んでいても思うに、日本人と言うのはこういう「ケチ」せざるを得ない状況や逆境に於いて、初めて真価(こつこつと諦めずに道を切り開き、成果を応用して行く力)を発揮する民族だなぁ、と思ったりもしますね。胸を張って誇りにして良いと思います。
Posted by at 11:32
▼1年前はこんなこと書いてました...▼